狂犬病ワクチン。
(注:ここで紹介するのはアメリカを中心とする海外での狂犬病ワクチンのスケジュールです。日本で推奨されているものとは接種期間、回数などが異なります。)
狂犬病ワクチンには2つの打ち方があります。
①犬に咬まれる前のいわゆる予防的なワクチン Pre-exposure vaccination(暴露前ワクチン)
②犬に咬まれた後の発病を防ぐ、治療的なワクチン post-exposure vaccination(暴露後ワクチン)
です。
①と②ではワクチン投与の仕方が違います。
説明の関係上②の治療的なワクチン(暴露後ワクチン)の説明を先にします。
前回も書きましたが、狂犬病はかかるとほぼ100%死亡する病気ですが、犬に咬まれたからといって必ず狂犬病を発症するわけではありません。
通常犬に咬まれた傷口からウイルスが侵入し、神経にそってゆっくりとウイルスが脳に向かって感染をしていきます。そして約1,2ヶ月後に発症(発病)します。この感染してから発病するまでの期間を潜伏期間といいます。
狂犬病に対する治療薬はないので唯一の対抗策は自分の免疫力でウイルスを殺す方法です。狂犬病ワクチンによる治療というのはウイルスそのものに対する治療ではなく、この症状が出る前の潜伏期間中にワクチンを繰り返し打つことによって免疫を高め発病をおさえこもうというものです。
いち早く免疫を高めるためにも、犬に咬まれてからどれだけ早く治療を始めるか(狂犬病ワクチンを打ち始める)が大事です。基本的に患者さんには咬まれたらすぐ来てくださいと説明しています。
ちなみにこの狂犬病ワクチンの治療スケジュールは
初日(1日目)、3日目、7日目、14日目の4回です。
つい最近まではアメリカのCDC(保健局)の勧告で1,3,7,14,28日目に注射をうつ5回接種が進められていましたが、今年4回接種でも大丈夫ということに変更になりました。
ただWHOも同じようにガイドラインを出しており、まだ5回接種が勧められています。(初回にワクチンを2回打つ方法では4回接種です)
そういう意味ではまだ議論が残る状況ですが、実際に治療するドクターと相談が必要です。
また、ワクチンではないのですが、狂犬病の治療に使う免疫グロブリンという薬もあります。
初回の治療の際にワクチンと同時に注射するのですが、詳細はまた記載します。
①の予防的なワクチン投与の考え方は一般的なワクチンの考え方と同じです。ワクチンをうって免疫力を高め、ウイルスに対する抵抗力をつけようというものです。
ただ狂犬病ワクチンで異なるところは、予防的なワクチンを打っていても犬に咬まれた場合は追加のワクチンを受けなければいけないというところです。
通常の ワクチンは予防として受けていればその病気にはかからない、もしくはかかっても軽症というのを目指しますが、狂犬病は確実に発症を予防したい病気です。そういう意味でも追加のワクチンは避けられないところかと思います。
ちなみにもしかまれた場合のワクチン接種は初回(0日)と3日の2回です。
結局注射するなら犬に噛まれてからでいいじゃないか、と思われると思います。
それにも一理はあります。
ではどんな人に暴露前ワクチンをすすめるか。
ですが。これは 間違いなく、子供です。
子供は無防備に犬に近づいてしまい、噛まれ、そしてそのことをきちんと親に伝えなかったりします。実際にベトナムで狂犬病で亡くなっている人の多くは子供です。
治療が手遅れになる可能性が高いので、やはりお子さんには狂犬病ワクチンをすすめています。
もうひとつは、すぐ病院にかかれない場所で働く人などです。
狂犬病は噛まれてすぐの治療が大切です。ベトナム国内で都市部以外の地方に勤務される方にはワクチンを勧めています。
ただ基本的にはすべての人に狂犬病ワクチンはすすめています。
当院で採用しているワクチンはSanofi pastureという会社が製造している。VERORABというワクチンです。
悩まられる方は相談してください。
ファミリーメディカルプラクティスクリニックホーチミン病院
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