2011年12月25日日曜日

マラリア予防薬 Malaria prophylaxis

マラリアには予防薬があります。

これは医者の患者啓蒙不足だと思うのですが、マラリアに予防薬があることを知っている日本人旅行者はとても少ないです。

カンボジア、ラオス、ベトナムにマラリアがはやっていることを知っている人も少ない。


(ちなみに欧米人旅行者はその辺にはかなりきっちりしており、クリニックに受診されるときも今マラリアの予防薬を飲んでいます、という方に多く出会います。残念なことに日本人の旅行者で今もしくは少し前までマラリアの予防薬を飲んでいますという人には一人もあったことがありません。)


マラリアの症状は周期的に現れる発熱です。この発熱の周期は、熱帯熱マラリア(毎日)、三日熱マラリア(48時間おき)、四日熱マラリア(72時間おき)などのマラリアの種類によって変わってきます。 それに伴い、頭痛、関節痛、腹痛、嘔吐、下痢などの症状がみられることがあります。

診断もマラリアを疑って血液検査を行えば通常の医療機関でも十分わかります。
また病院によっては迅速検査キットというものがあり、特別な検査機器がなくても検査ができます。


マラリアは(特に熱帯熱マラリアは)かかると非常に危険な病気です。命にかかわることも十分あります。ですからカンボジア、ラオス、(ベトナムの山間部)に長期滞在する人にはぜひ予防薬を飲んでほしいと思います。 


予防薬

マラロン(MALARONE)
予防薬として世界的に一番メジャーなものは Malarone という薬です。1日1回で済みますし、帰国後も短期間で飲み終えることができます。副作用もマラリアの予防薬のなかで一番少ないと言われています。ただ日本では認可されていないので、輸入された薬剤をトラベルクリニックなどでもらうことになります。そのためどうしてもコストが高くついてしまうようです。
(残念なことにベトナムでも手に入りません。タイやシンガポールなどでは買えるようです)

メフロキン(MEFLOQUINE):メファンキン
日本でも認可されているマラリア予防薬です。週1回の内服でいいのですが、うつや、悪夢など精神的な副作用が比較的多く見られます。
カンボジアやタイではこのメフロキン耐性のマラリアが見られているので、この地域を旅行する場合はメフロキンをお勧めしていません

ドキシサイクリン(DOXYCYCLINE):ビブラマイシン
日本でも抗生剤として使われている薬です。マラリアの予防作用もあります。どこの病院でも比較的手に入れやすく、コストもそれほど高くはつきません。 副作用は空腹時に飲んだり、内服直後に昼寝などしてしまうと、ひどい食道炎(胸やけ)を起こします。必ず食事と水と飲む必要があります。またこの薬を飲むと日光過敏症(日焼け部分が赤くはれ上がったり、ただれたり)になったりすることがあるので日光を避けなければいけません。


総合的には当院では(マラロンが手に入らないため)ドキシサイクリンを勧めています。


東南アジア、インド、アフリカ、中南米を旅する人はぜひ旅行前にマラリアの流行、予防薬必要の有無を確認されることをお勧めします。














2011年12月22日木曜日

マラリア ベトナムMaralia in Vietnam

ベトナムではマラリアがありますか?

日本人の患者さんから直接聞かれたことはありませんが、欧米人からはよく質問があるのがこの質問です。答えはYesです。
 確かにベトナムではまだマラリアの感染が起きている地域があります。それは主ににカンボジアやラオスとの国境近くの省や山間部です。

ただ多くの駐在員や旅行者が行くような都市部、ハノイ、ダナン、ホーチミンではほとんど見られていません。
私たちのクリニックはホーチミン、ハノイで10年以上駐在員、旅行者の診療を行っていますが、ベトナムでマラリアにかかった患者さんは来たことがありません。(ラオス、カンボジアでマラリアにかかったという人は実際にいます)


統計的には
以下の図はホーチミンにある、Oxford大学の研究機関が出した報告の引用です。
上の図が熱帯熱マラリアという重篤なマラリアの感染の状況。
下の図が三日熱マラリアという比較的症状の軽いマラリアの感染の状況です。
省ごとに発生率が示されており、真っ黒なところが感染率が人口1万人に対して50人以上です。



熱帯熱マラリアの発生状況(左が2007年、右が2008年です)

三日熱マラリアの発生状況(左が2007年、右が2008年です)


ベトナム中部、山間部に長く行く人は気をつけたほうが良さそうですが、旅行で滞在する程度であれば予防薬は必要ないと考えられます。